- 2019.09.15
日本橋で胡麻すり
私が百貨店の催し物で期間中ずっと居るのは、日本橋の高島屋さんだけです。
お客さんへのセールストークが大変苦手なので、私が居ても売上げに貢献しません。また、そんな私をフォローしなければならない社員に余計な負担をかけてしまいます。
しかし、日本橋高島屋さんだけには、お邪魔するのです。その理由は、セールストークが下手でも、私が胡麻をすることを楽しみにしていただいているお客さんも居られることも確かですが、一番の理由は日本橋高島屋さんには恩があるからです。
10年以上前の話しですが、当時使用していた中国産黒胡麻から基準値を超える除草剤の残留が発覚したのです。微量の基準値超えだったので、公表して該当製品の自主回収をするのか、多くの会社が難しい選択に迫られました。何故なら、その頃は中国産の食品偽装が続発しており、連日報道番組で取り上げられていました。当然自主回収には、多額の費用もかかりますし、自社の評判を落とすことになるからです。
そのような状況の中で、当社は文書にはしていませんでしたが、農薬を使っていない胡麻を使っていると、お客さんに説明していたので、微量でも農薬が残留していたら、偽りを言ったことになるので、即時に該当製品を自主回収することにしました。
スーパーや百貨店、問屋などの得意先や個人のお客さんに文書や電話で連絡して、明日から本格的に対応しなければならないという前日夕方に、突然日本橋高島屋の二人の担当者の方が当社に来られました。大変なお叱りを受けるのかと身構えていると、担当者の方は「今回の山田製油さんの正直な対応は、日本橋高島屋としては高く評価しています。明日からのお客様への対応は大変になるでしょうが、頑張ってください」とわざわざ伝えに来てくださったのでした。そのお言葉が翌日からの深夜までの対応の励みとなりました。本当に嬉しかったことを今でも忘れません。困った時こそ助けることがビジネスの世界でも大切だと思います。
だから販売は苦手で高島屋さんの売上げには貢献できませんが、一生懸命胡麻をする姿を、お客さんに見てもらい喜んでもらうことはできます。それを続けることが私の恩返しだと思っています。
明日が最終日ですが、8階の「美食の京都」催事会場で胡麻を擦っていますので、ぜひ皆さんお越しください。