トルコ料理には、「お坊さんの気絶」という名の
茄子とトマトを使った料理がありますが、
これは、僧を気絶させるほど美味しい、からだとか。

同じようなものは中国にも！
「仏跳牆（ぶっちょうしょう）」というスープは、
あまりの美味しそうな香りに修行僧ですらお寺の塀を飛び越えて来た、
というのが語源だそう…

宗教者と食べ物の葛藤？を名に持つ食べ物が色々。
それほどに美味しいのだ！という主張を感じます。

一方、日本の料理の名前はというと、
概して、趣きのあるものが多いように思います。
時雨煮。みぞれ煮。雪見鍋。月見うどん。
時雨、みぞれ、雪や月。…自然からきているものです。

土佐煮、松前漬け、深川丼などは、地名が由来。
それぞれ、その地の名産を使った料理名です。
（土佐はかつお節、松前は数の子と昆布とするめいか、深川はあさり）

ちなみに、奈良の竜田川にちなんだ竜田揚げは、
揚げた赤茶色と部分的に片栗粉の白い色が残っている様子を
紅葉の美しい竜田川をに見立てたとか。
百人一首の中でも有名な和歌、
ちはやぶる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くくるとは
とも関連するネーミングです。

京都の下鴨神社内の御手洗（みたらし）池が由来のみたらし団子、
こちらは、御手洗池の底から湧き上がる水泡の形を、団子に見立てた
ことから来ているとか。

いずれも、その地と直接関係はないのですが、何やら風流です。

さて、きょうは「沢煮椀」（さわにわん）をご紹介するのですが、
この沢煮椀は、どんな由来かご存じでしょうか？

私は、沢から「沢遊び」を想像して、
夏のさわやかな汁物かと思っていたのですが、違いました。
「沢」には「沢山の」の意味があることから、具だくさんの汁物。
猟師が日持ちする塩漬けの豚肉等を持って山に入り、
山菜といっしょに具沢山の汁を作ったことが始まりだそうです。

今では一般的には、細切りの野菜と豚肉の具だくさんのすまし汁。
豚バラ肉のコクと野菜の食感が魅力の、あっさりとしたおつゆです。

同じ豚と野菜の汁物と言えば、豚汁がありますが、
豚汁がみそ仕立てで、具材をザクザク切って入れるのに対し、
沢煮椀は、塩と醤油の味付けで、豚肉も野菜もすべてせん切り。

せん切り野菜なので、早く火が通り、味が染みるので、
煮る時間が短く色んな野菜の歯ごたえが感じられます。

一般的なレシピでは、沸騰したお湯の中に材料を入れていきますが、
ここでは、ごま油で炒めてから作っているので、時短で、また、
ごま油の風味が加わって、コクのあるお味です。
野菜がたっぷりいただける一品、是非作ってみてください。

 

沢煮椀～ごま仕立て